The Measure of Quality
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2016 Honda Business Systems Ltd. Updated: May 8, 2016

膜厚測定の原理

デフェルスコ社膜厚計

 電磁・渦電流式膜厚計 PsiTctor6000膜厚測定は、製品品質、工程管理、コスト管理において重要な役割を果たします。また、膜厚は種々の計器で測定することができます。膜厚測定の計器およびその使用方法を理解することはコーティング工程において有用です。

最善の膜厚測定方法を決定する際、被膜の種類、母材、測定範囲、測定対象のサイズ/形状、装置のコストが関係してきます。一般に有機膜に対して使用される測定方法には、磁気式、渦電流式、超音波などの非破壊式手法、あるいはマイクロメータ、切断面あるいは重量測定などを用いる破壊式手法などがあります。破壊式手法は硬化前の膜厚にも利用されます。

磁気式膜厚計

磁気式膜厚計は、鉄母材の非磁性被膜厚を非破壊式に測定するのに使用されます。 鋼鉄、鉄上の殆どの被膜はこの方式にて測定されます。磁気式膜厚計は、磁気プルオフ(磁気吸着力)あるいは磁石/電磁誘導の原理を使用しています。

磁気吸着式(プル-オフ型)膜厚計

これらの膜厚計は永久磁石、較正されたスプリング、および目盛りの付いたスケールから構成されています。 磁石と磁化鉄の間は互いに引き合い、膜厚が増えるのに従って、吸引力は弱くなります。 膜厚は、この吸引力を測定することによって、求められます。 この力が弱ければ弱いほど、膜厚はより大きくなります。 測定結果は表面の荒さ、曲率、母材の厚さ、および組成に影響されます。

磁石を使用した膜厚計は、簡単、安価で、携帯ができ、通常、較正調整も必要としません。 このタイプは低価格で、精度をそれほど要求されない作業工程内で使用されています。磁石を使用した膜厚計は、通常、ペン式かロールバックダイヤルタイプです。

ペンタイプモデルの膜厚計は螺旋状のスプリングと磁石を備えています(図1を参照してください)。 スプリングは、表面に垂直に作用し、大部分は、重力を部分的に補正するよう設計されており、温度の高い、または近づくのが困難な表面を測定することができます。三種類のインディケータにより、上向き、下向き、水平の位置で±10%の許容範囲で正確な測定ができます。

 

ペン型磁気式膜厚計ポジペン

図1 ペンタイプ磁気力膜厚計

ロールバックダイヤルモデルの膜厚計は最も一般的な形式の磁石式膜厚計(図2参照)です。 プローブ先端に強力な磁気を保持する磁石を埋め込まれ、それに較正されたバネが接続されています。このバネが、プローブと母材である磁性金属(主に鉄系)に吸着する力と反発しており、プローブを測定対象に吸着させてから引っ張ると、ある位置で離れる仕組みになっている。この位置が膜厚と相関関係にあり、プローブが測定対象から離れる瞬間にプローブと連動した目盛を読み取ることで膜厚を測定します。これらの膜厚計は使用が簡単で、重力の影響をうけないバランスのとれているアームがついていますので、どんな場所でも測定できます。また、爆発しやすい環境でも安全であり、塗装業者、粉体塗装業者で、一般的に使用されています。典型的な許容範囲は±5%です。

磁石式膜厚計 PsiTest

図2 ロールバックダイヤル磁気力膜厚計

磁気及び電磁誘導式膜厚計
これらの電子式膜厚計は、鋼鉄に近づけプローブ表面における磁束変化を測定します。プローブ表面における磁束密度の大きさは鉄母材からの距離と相関性があります。磁束密度を測定することによって,膜厚は求められます。 磁気誘導型膜厚計は磁場源として永久磁石を使用します。 ホール効果ジェネレータはあるいは電磁抵抗器が磁極での磁束密度を検知するために使用されます.電磁誘導型膜厚計は、交流磁界を使用します。 コイル付の柔らかい強磁性ロッドが、磁界を生成するのに使用されます。 第2のコイルは、磁束変化を検出するのに使用されます。

デフェルスコ社の電磁誘導膜厚計を図3に示します。通常、一定の圧力でプローブを押し当て、操作者の影響を取り除き、液晶ディスプレイ(LCD)上に測定結果を表示し、さらに測定結果を格納し、測定結果の解析をおこない、結果をプリンタあるいはコンピュータへ出力します。標準的許容範囲は±1%です。 正確な結果を得るためには、メーカの指示に従ってください.

膜厚計 PosiTectorR 6000 Series

図3 電磁誘導膜厚計

電磁式膜厚計(ポジテクタ6000Fシリーズ、簡易膜厚計DFT-F)は多くの形状、サイズのものが取り揃えられております。通常、操作者によって測定値が影響されないよう定圧プローブを使用します。測定値は液晶ディスプレイに表示されます。また、測定値を保存し、さらなる解析のためにプリンタやパソコンへ転送するオプションもあります。精度は通常、±1%です。

この測定の標準的方法はASTM D1400、ISO2360、およびISO2808で入手可能です。

渦電流式膜厚計

この渦電流技術は、非鉄金属母材での非破壊式絶縁性膜厚を測定するのに使用されています。 アルミニウム上の塗装や銅のアクリル膜などが一般的な例です。 渦電流式膜厚計は、電磁誘導の原理に基づいているので、電磁誘導法に多くの類似性を持っています。高周波交流(1MHzの上の)を発生させる細いコイルは、プローブ表面で交流磁界を交互に生成するのに使用されます。プローブを導電性表面に近づけたとき,交流磁界は表面に渦電流を生成します。 渦電流の大きさは、母材特性とプローブからの距離、即ち,膜厚と相関性があります。渦電流は反電磁界磁場を生成し、コイルで検知されます.

渦電流膜厚計(ポジテクタ6000Nシリーズ)は、外観、操作とも電磁式膜厚計と同じです。この膜厚計は鉄以外の全ての金属上の膜厚測定に使用されます。定圧プローブを使用し、LCDに結果を表示します。オプションで、測定結果を格納あるいは,解析を行い,プリンタまたはコンピュータに出力できます。標準的な許容範囲は±1%です。 測定は,表面の荒さ、湾曲、母材厚、金属母材と測定厚の種類に影響されます。

正確な結果を得るためには、メーカの指示に従ってください. この測定の標準的方法はASTM D1400、ISO2360、およびISO2808で入手可能です。

装置に磁気と渦電流の原理の両方を使用(電磁・渦電流式膜厚計ポジテクタ6000FN、簡易膜厚計DFT-FN)することは、現在では一般的です。測定の原理を自動的に切り替え、測定を簡単にしている計器もあります。どんな金属の上でも自動的に1つの動作原理からもう片方に切り替わることによって、膜厚測定の作業を簡素化します、これらのタイプは、多く出回っています。

超音波

超音波-超音波の反射波技術を応用した膜厚計(ポジテクタ200)は、種々の非金属母材での非破壊膜厚測定に使用されています。 プラスチック上の塗料、木材上のラッカー、およびコンクリート上のエポキシなどです。

超音波膜厚計 PosiTectorR 200 Serie

図4 非金属母材の膜厚測定可能な超音波膜厚計

計器のプローブには被膜中にパルスを送る超音波トランスデューサが付いています(図4を参照してください)。パルスは、母材からトランスデューサまで、反射して戻ってきて、高周波電気信号に変換されます。 反射波形は、デジタル化され、膜厚を求めるために解析されます。多層系の個々の層を測定することもできます。

カプラントは、プローブと測定表面の間に、通常使用されます。計器の標準的な許容範囲は±3%です。正確な結果を得るためには、メーカの指示に従ってください. この測定の標準的方法はASTM D6132で入手可能です。

マイクロメータ

マイクロメータは、膜厚をチェックするのに使用されます。 どんなコーティング/母材の組み合わせも測定できる利点がありますが、露出した母材へのアクセスを必要とする欠点があります。被膜の表面と母材の裏側の両方にタッチしなければならない要件は使用を制限し、薄い膜厚測定にはしばしば、不向きです。

被膜のないものと有るものの両方を測定し、その差が被膜厚となります。粗い表面においては最も表面が高くなっているところを測定します。

破壊試験

コーティングされた部分をカットし、カット面を顕微鏡で見ることで膜厚が測定できます。膜厚は切断面を作成し、スケール付きの顕微鏡で断面を見ることによって、測定することができます。切断ツールは、小さく、正確にVカットするために使用される。

破壊式は原理的には分かり易いのですが、試料作成、結果の判定には技術を要しますので測定誤りが生じます。測定する目盛を調整することは、特に操作者間の相違など、不正確さの原因となります。しかし、これらの状態を観察することは参考となります。この方法は、費用のかからない、非破壊式ができない、非破壊手法の確認手段として使用されます。ASTM D 4138はこの測定システムに対しての標準手法の概要を説明しています。

重量測定

コーティングの重量と面積を測定することによって、厚さを測定することができます。 最も簡単な方法はコーティングの前後に重さを測ることです。 重量と面積が決定すると、厚さは、次の式で計算されます。

T = m x 10
       A x d

Tが厚さ(μm)、mはコーティング量(mg)。Aは測定される領域(cm2)、dは密度(cm3)

母材が粗い、あるいは被膜が平らでない場合、コーティング量と膜厚を関係づけることは困難です。

ぬれ厚測定

ぬれ厚膜厚計は、固形容積率が既知であれば、所定の乾燥皮膜に到達するためのぬれ厚量(未乾燥被膜量)を決定するのに役立ちます。平らな、湾曲した滑らかな表面の塗料、ニス、ラッカーペイントなどの未乾燥の有機膜を測定します。 ぬれ厚(未乾燥被膜)を測定するには、測定者による補正、調整が必要です。測定後の被膜の補正は、コスト的に余分な労力を必要とし、粘着の問題、コーティングシステム全体の問題になる場合があります。

正しいぬれ被膜(未乾燥皮膜(WFT))を決定する式(希釈剤のあるなしにかかわらず両方)は以下の通りです:

希釈剤なしの場合:

WFT = 乾燥後の膜厚
                  固形容積率

希釈剤がある場合:

WFT = 乾燥後の膜厚  /  固形容積率
                        100%   +   希釈剤添加率%

4つのタイプの計器があります: V字形の切込み、レンズ、エクセントリックローラー、およびマイクロメータ。 それぞれには、それら自身の独自の操作手順があります。また、ノッチゲージが最も一般的です。 それらはあまり高くない計器なので、測定、再使用後、完全に掃除するか、または処分します。ノッチタイプのぬれ厚(未乾燥皮膜)測定計器は表面の端に較正されたノッチの付いたフラットなアルミニウム、プラスチック、ステンレス鋼を備えています。計器は測定される表面に置き、次に引き上げます。ぬれ厚(未乾燥皮膜厚)は、最も多く上塗りされたノッチと上塗りされていないノッチの間にあります。ノッチ測定器は正確でもないし、精度も良くありませんが、サイズと形状からより正確な方法を使用できない物品、例えば、レンズ、エクセントリックローラー計器のような物のおよそのぬれ厚(未乾燥皮膜)を決定する際には有用です(ASTM D1212参照)。

計器は、滑らかで不規則性のない表面で、長さ方向に沿って測定します。乾燥の速いぬれ厚(未乾燥皮膜)測定は、不正確になります。ASTM D4414は、ノッチゲージによる未乾燥皮膜測定に対して、標準手法の概要を説明しています。

粉体塗装は、くし形の治具で測定することができます。くし形の治具を素地に垂直になるよう当て、塗膜部材の表面に沿って動かし、塗膜に残した跡を観察します。塗膜厚は、跡を残し、塗膜が付着している歯と、跡を残さず、塗膜が付着していない歯の間の値となります。

精度は±5μmです。

膜厚標準

膜厚標準

膜厚計は既知の厚さ標準で較正されています。 厚さ標準には多くのものがありますが、それらがNISTなどの国際標準に準拠しているか確かめなければなりません。標準は少なくとも較正に使用される値の4倍の精度があるかを検証することも重要です。これらの標準での定期的なチェックにより計器が正しく動作しているかを検証します。読取り値が計器の仕様と合っていない場合、計器は調整、修理が必要となります。

総括
塗装の厚みは経済性、塗装品質に大きな影響を与えます。塗装業者は日常定的に膜厚測定を実施すべきです。
正しい膜厚計の選択は、塗装厚の測定範囲、形状、母材の種類、コスト、要求される精度に依存します。